2022/7/14

2022/07/14

旅行業者代理業にできることと登録要件や手続きを解説。

この記事の監修
時村 公之

行政書士つなぐ法務事務所 代表(特定行政書士/国内旅行業務取扱管理者)

時村 公之

1973年1月生まれ/広島県出身
旅行業・旅館業に特化した、中国・四国地方随一の観光法務専門の行政書士。
株式会社や個人事業主はもちろんのこと、観光協会やツーリズム機構などの一般社団法人の旅行業登録も手掛ける。
支援先企業も中国・四国地方を中心に、北陸・東海・関西・九州方面と、幅広いエリアで旅行業登録に関する支援を行っている。

旅行業者代理業とは、自らは旅行商品の企画を行なわず、他の旅行業者の取り扱う旅行商品を代理して販売することのできる登録区分です。

今回は、旅行業登録を専門で取り扱う行政書士が、旅行業者代理業登録ついて丁寧に解説します。

この記事では、旅行業者代理業の登録要件や登録手続きなどをわかりやすく解説しているので、登録を検討している方は、是非参考にして下さい。

1.旅行業者代理業にできること

まず、旅行業者代理業に登録することで、どのようなことができるのかをご案内します。

旅行業者代理業は、以下のように旅行業者から委託された旅行業務が取り扱える登録区分です。

企画旅行 手配旅行

相談
業務

募集型 受注型
海外 国内 海外 国内 海外 国内
旅行業者代理業 旅行業者から委託された業務

観光庁HP「(図1)旅行業等の登録区分」をもとに作成

それでは、旅行業者代理業ができることを、もう少し詳しく見て行きましょう。

1-1.企画旅行

企画旅行とは、旅行業者が旅行計画を作成して、その旅行計画に必要な宿泊先や交通機関等(バス・列車・飛行機など)を旅行会社が契約しておいて、旅行者に提供するような旅行商品のことを言います(旅行業法2条第1項第1号)。

企画旅行のうち「募集型企画旅行」とは、あらかじめ旅行業者が旅行計画を作成して、旅行者を募集するタイプの企画旅行のことです。具体的には旅行代理店が扱うパッケージツアーなどが、これに当たります。

一方、「受注型企画旅行」とは、旅行者からの依頼に応じて、旅行業者が旅行計画を作成するもので、修学旅行や社員旅行などの団体旅行が、これに当たります。

旅行業者代理業に登録すると、他の旅行業者が企画した企画旅行を代理販売することができます。

具体的には、旅行業者代理業は自社が取り扱いたいと考える旅行商品を持っている旅行業者と業務委託契約を締結し、業務委託元の旅行業者(所属旅行会社という)が扱う旅行商品のうち、所属旅行会社から委任された旅行商品のみを取り扱うことができます。

ただし、業務委託契約を締結できる所属旅行会社は1社に限られる為、2社以上の旅行業者と業務委託契約を結ぶことはできません。

なお、旅行業者代理業の収入は、所属旅行会社の旅行商品を代理販売した販売手数料です。

3-2.手配旅行

手配旅行とは、旅行者と運送・宿泊事業者との間で、旅行者に代理して運送・宿泊事業者と契約の締結・媒介・取次をしたり、運送・宿泊業者に代理して旅行者と契約の締結・媒介・取次をしたりする旅行業務を言います(旅行業法第2条第1項第3号・第4号)。

具体的には、旅行業者の店頭やWebサイトなどで、旅館やホテルなどの宿泊施設や飛行機・JRなどのチケットを手配するような場合があたります。

この手配旅行についても、所属旅行会社が取り扱う手配旅行のうち、委任された旅行商品のみを取り扱うことができます。

1-3.相談業務

相談業務とは旅行に関する相談に応ずる行為のことを言うのですが、旅行業者代理業者は相談業務を有料で行うことはできません(旅行業法第2条第2項)。

2.旅行業者代理業の登録要件

旅行業者代理業の登録をおこなう為には、以下のような要件を満たさなければいけません。

(1)申請者が拒否事由に該当しないこと
(2)旅行業務取扱管理者を選任できること
(3)事業目的に「旅行業者代理業」又は「旅行業法に基づく旅行業者代理業」の記載があること

各項目について、詳しく見て行きましょう。

2-1.申請者が拒否事由に該当しないこと

申請者が、以下にあげる項目のいずれかに該当する場合は、旅行業登録をすることができません(旅行業法6条第1項第1~8号)。

拒否事由
過去5年間に旅行業等の登録を取り消された者(または、過去5年間に旅行業等の登録を取消された法人において、当時役員であった者)
過去5年間に禁錮以上の刑、または旅行業法に違反して罰金刑に処せられた者
暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
申請前5年以内に旅行業務等に関し不正な行為をした者
未成年者でその法定代理人(親権者等)が、①~⑤のいずれかに該当するもの
心身の故障により旅行業、旅行業者代理業を適正に遂行することができない者として国土交通省令で定めるもの又は破産手続き開始の決定を受けて復権を得ない者
申請者が法人の場合、①~④、⑥のいずれかに該当する役員がいるもの
暴力団員等がその事業活動を支配する者

e-GOV法令検索「旅行業法」をもとに、行政書士つなぐ法務事務所にて作成

特に申請者が法人の場合は、⑦にあるように①~④や⑥に該当する役員がいると拒否事由に該当してしまい、旅行業登録を拒否されてしまいますので、注意が必要です。

2-2. 旅行業務取扱管理者を選任できること

旅行業務取扱管理者とは、旅行業者が法令に基づいた運営を行うよう管理・監督をする役割を担う人のことで、営業所ごとに選任することが義務付けられています(旅行業法11条の2)。

旅行業務取扱管理者の具体的な役割は、以下の10項目です(旅行業法施行規則10条)。

旅行業務取扱管理者の役割
旅行に関する計画の作成に関する事項
旅行業務の取扱い料金の掲示に関する事項
旅行業約款の掲示及び備置きに関する事項
取引条件の説明に関する事項
契約書面の交付に関する事項
旅行の広告に関する事項
運送等サービスの確実な提供等による企画旅行の円滑な実施に関する事項
旅行に関する苦情の処理に関する事項
契約締結の年月日、契約の相手方その他の旅行者又は旅行に関するサービスを提供する者と締結した契約の内容に係る重要な事項についての明確な記録又は関係書類の保管に関する事項
上記のほか、取引の公正、旅行の安全及び旅行者の利便を確保するため必要な事項として観光庁長官が定める事項

引用:一般社団法人日本旅行業協会「旅行業法解説 約款例集解説」

旅行業者代理業の場合、所属旅行会社から委託される旅行商品に応じて「総合旅行業務取扱管理者」「国内旅行業務取扱管理者」「地域限定旅行業務取扱管理者」試験の合格者から、旅行業務取扱管理者を選任します。

ただし、合格者であっても前段の「拒否事由」の①~⑥のいずれかに該当する場合は、選任できません。

2-3. 事業目的に「旅行業者代理業」又は「旅行業法に基づく旅行業者代理業」の記載があること

申請者が法人の場合、定款と登記簿謄本の事業目的に、「旅行業者代理業」もしくは「旅行業法に基づく旅行業者代理業」のどちらかの文言が記載されていなければいけません。

これは、観光庁の内部マニュアルによるものなのですが、各自治体でも厳格に運用されていますので、これ以外の文言では登録できません。

なお、旅行業登録の要件である「基準資産額」や「営業保証金(または弁済業務保証金分担金)」などは、旅行業者代理業には必要ありません。

3.旅行業者代理業の登録手続

旅行業者代理業の登録手続きの流れは以下の通りです。

登録手続の流れ
STEP1 所属旅行業者と業務委託契約を締結
STEP2 各都道府県知事へ登録申請書類を提出
STEP3 登録通知書の受領
GOAL! 営業開始

まず、自社が取り扱いたい旅行を取り扱っている旅行会社と業務委託契約を締結します。契約では、「委託される旅行商品」や「販売手数料」などを決めておきます。

次に、登録申請書を作成し、登録行政庁に提出します。

旅行業者代理業の登録行政庁は、各都道府県知事です。登録申請書類の提出について、申請者が直接持参しなければならない自治体もあります。その際に、「事業計画」や「事故処理体制」等についてヒアリングを受けることもあります。

登録が完了して登録通知書が送付されますので、事務所に「旅行業登録票」「所属旅行業者の定めた料金表」「所属旅行業者の旅行業約款」を備えおけば、旅行業者代理業を始めることができます。

4.まとめ

旅行業者代理業登録の業務範囲や登録要件、登録手続きについて解説しましたが、いかがだったでしょうか?

旅行業者代理業は、自社で旅行商品を企画したり実施したりするノウハウがないといった事業者が、旅行商品を取り扱いたいといった場合にピッタリの登録区分です。

例えばフィリピン雑貨を販売している事業者がコラボ商品としてフィリピン旅行を販売するといった場合などが、これに当たります。

「まずは、旅行商品を取り扱ってみたい」という方は、旅行業者代理業の登録を検討してみてください。

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