2022/5/30

2022/07/06

第2種旅行業に登録するための要件と手続きを解説。

この記事の監修
時村 公之

行政書士つなぐ法務事務所 代表(特定行政書士/国内旅行業務取扱管理者)

時村 公之

1973年1月生まれ/広島県出身
旅行業・旅館業に特化した、中国・四国地方随一の観光法務専門の行政書士。
株式会社や個人事業主はもちろんのこと、観光協会やツーリズム機構などの一般社団法人の旅行業登録も手掛ける。
支援先企業も中国・四国地方を中心に、北陸・東海・関西・九州方面と、幅広いエリアで旅行業登録に関する支援を行っている。

第2種旅行業は、海外の募集型企画旅行を除く全ての旅行(国内募集型企画旅行・受注型企画旅行・手配旅行)が取り扱える旅行業登録です。ただ、取り扱える範囲が広いゆえに、登録要件が第1種旅行業の次に厳しい登録区分でもあります。

そこで、旅行業登録を専門で取り扱う行政書士が、第2種旅行業登録ついて丁寧に解説します。

この記事では、第2種旅行業の登録要件や登録手続きなどをわかりやすく解説しているので、登録を検討している方は、是非参考にして下さい。

1.第2種旅行業の登録要件

第2種旅行業の登録をおこなう為には、以下のような要件を満たさなければいけません。

(1)申請者が拒否事由に該当しないこと
(2)旅行業務取扱管理者を選任できること
(3)事業目的に「旅行業」又は「旅行業法に基づく旅行業」の記載があること
(4)基準資産額を確保すること
(5)営業保証金の供託又は弁済業務保証金分担金の納付をすること

各項目について、詳しく見て行きましょう。

1-1.申請者が拒否事由に該当しないこと

申請者が、以下にあげる項目のいずれかに該当する場合は、旅行業登録をすることができません(旅行業法6条第1項第1~8号)。

拒否事由
過去5年間に旅行業等の登録を取り消された者(または、過去5年間に旅行業等の登録を取消された法人において、当時役員であった者)
過去5年間に禁錮以上の刑、または旅行業法に違反して罰金刑に処せられた者
暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
申請前5年以内に旅行業務等に関し不正な行為をした者
未成年者でその法定代理人(親権者等)が、①~⑤のいずれかに該当するもの
心身の故障により旅行業、旅行業者代理業を適正に遂行することができない者として国土交通省令で定めるもの又は破産手続き開始の決定を受けて復権を得ない者
申請者が法人の場合、①~④、⑥のいずれかに該当する役員がいるもの
暴力団員等がその事業活動を支配する者

e-GOV法令検索「旅行業法」をもとに、行政書士つなぐ法務事務所にて作成

特に申請者が法人の場合は、⑦にあるように①~④や⑥に該当する役員がいると拒否事由に該当してしまい、旅行業登録を拒否されてしまいますので、注意が必要です。

1-2. 旅行業務取扱管理者を選任できること

旅行業務取扱管理者とは、旅行業者が法令に基づいた運営を行うよう管理・監督をする役割を担う人のことで、営業所ごとに選任することが義務付けられています(旅行業法11条の2)。

旅行業務取扱管理者の具体的な役割は、以下の10項目です(旅行業法施行規則10条)。

旅行業務取扱管理者の役割
旅行に関する計画の作成に関する事項
旅行業務の取扱い料金の掲示に関する事項
旅行業約款の掲示及び備置きに関する事項
取引条件の説明に関する事項
契約書面の交付に関する事項
旅行の広告に関する事項
運送等サービスの確実な提供等による企画旅行の円滑な実施に関する事項
旅行に関する苦情の処理に関する事項
契約締結の年月日、契約の相手方その他の旅行者又は旅行に関するサービスを提供する者と締結した契約の内容に係る重要な事項についての明確な記録又は関係書類の保管に関する事項
上記のほか、取引の公正、旅行の安全及び旅行者の利便を確保するため必要な事項として観光庁長官が定める事項

引用:一般社団法人日本旅行業協会「旅行業法解説 約款例集解説」

第2種旅行業の場合、募集型企画旅行では海外旅行を取り扱うことはできませんが、受注型企画旅行や手配旅行、他社の募集型企画旅行の代理販売、相談業務については海外旅行も扱えます。

ですので、海外旅行を扱う場合は「総合旅行業務取扱管理者」試験の合格者から、国内旅行のみを扱う場合は「総合旅行業務取扱管理者」または「国内旅行業務取扱管理者」試験の合格者から、旅行業務取扱管理者を選任します。

ただし、試験に合格していても、前段で出てきた「拒否事由」のうち、①~⑥のいずれかに該当する場合は、選任できません。

1-3. 事業目的に「旅行業」又は「旅行業法に基づく旅行業」の記載があること

申請者が法人の場合、定款と登記簿謄本の事業目的には、「旅行業」もしくは「旅行業法に基づく旅行業」のどちらかの文言が記載されていなければいけません。

これは、観光庁の内部マニュアルによるものなのですが、各自治体でも厳格に運用されていますので、これ以外の文言では登録できません。

1-4. 基準資産額を確保すること

第2種旅行業を登録するために必要な基準資産額は「700万円」と定められています。

基準資産額とは、旅行業登録の際に旅行業者が、あらかじめ保持しておかなければならない自社の資産の金額の事です。

登録種別 基準資産額
第2種旅行業 700万円

自社の基準資産額は、以下の式で算出できます。

自社の基準資産額=資産の総額-負債の総額-繰延資産-営業権(のれん)-不良債権-営業保証金等

基準資産額については、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひこちらもご覧ください。

旅行業に必要な基準資産額の計算方法や足りない時の対処法を解説!

1-5. 営業保証金の供託又は弁済業務保証金分担金の納付をすること

旅行業法では、「旅行業者が倒産した」などの理由で、旅行業者が旅行代金の返済ができなくなった場合でも、旅行者が旅行代金等の弁済を受けることができる制度を設けています。

制度には、「営業保証金制度」と「弁済業務保証金制度」の2つがあります。旅行業者は、必ずどちらかの制度を利用できるようにしておかなければいけません。

営業保証金制度では、旅行業者が営業保証金(供託金)を供託所に供託します。万が一の場合、旅行者はこの供託金の中から弁済を受けます。

営業保証金の額は、前事業年度の旅行業務に関する旅行者との取引額に応じて決まりますが、第2種旅行業の場合は、営業を開始するまでに、少なくとも以下の金額を供託しなければいけません(旅行業法8条、旅行業法施行規則6条の2)。

区分 営業保証金
第2種旅行業 1,100万円

一方、弁済業務保証金制度では、旅行業者が旅行業協会に入会して、旅行業協会に弁済業務保証金分担金を納付します。万が一の場合、旅行者は旅行業協会を通じて弁済を受けます。

弁済業務保証金分担金の額も、営業保証金と同じく前事業年度の旅行業務に関する旅行者との取引額に応じて決まっているのですが、その金額は営業保証金の5分の1となります。

区分 弁済業務保証金分担金
第2種旅行業 220万円

営業保証金や弁済業務保証金分担金については、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひこちらもご覧ください。

営業保証金を供託するってどうするの?制度の概要や必要な金額も詳しく解説

旅行業協会と弁済業務保証金分担金。営業保証金との違いも徹底解説!

2.第2種旅行業の登録手続

第2種旅行業の登録手続きの流れは以下の通りです。

登録手続の流れ
STEP1 旅行業協会への入会申込・審査・入会承諾書の受領
STEP2 各都道府県知事へ登録申請書類を提出
STEP3 登録通知書の受領
STEP4 協会に弁済業務保証金分担金(+入会金・年会費)を納付
GOAL! 営業開始

旅行業協会の入会は、「日本旅行業協会(JATA)」と「全国旅行業協会(ANTA)」のふたつがありますが、多くの場合ANTAに入会して、旅行業登録を行います。

旅行業協会に入会する主な理由は、弁済業務保証金制度を利用できるからですが、第2種旅行業登録を行う事業者にANTAが選ばれる理由は、年会費がJATA1/3程度であることがあげられます。

なお、「旅行業協会への入会→旅行業登録申請→営業開始」までの期間は、どちらの旅行業協会に入会するかで異なります。

JATAは随時入会を受け付けているで、旅行業協会の入会から旅行業登録までの期間は2~3ヶ月程度です。一方、ANTAは2ヶ月に1度のペースで入会を受け付けているため、この期間が3~4ヶ月程度と、JATAに比べて1~2ヶ月程度長くなります。もちろん書類に不備などがあれば、期間はもっと長くなります。

第2種旅行業の登録行政庁は、各都道府県知事です。具体的には、自治体の担当窓口(観光課、観光振興課等)に提出します。

登録申請書類の提出方法は自治体によって異なり、郵送や代理申請を受け付けている自治体もあれば、申請者が直接持参しなければならない自治体もあります。その際に、「事業計画」や「資産基準」「事故処理体制」等についてヒアリングを受けることもあります。

登録が完了すると登録通知書が送付されます。登録通知書を受領したら、2週間以内に弁済業務保証金分担金等を協会に納付して、旅行業を始めることができます。

3.第2種旅行業にできること

最後に、第2種旅行業に登録することで、何ができるのかをご案内します。

第2種旅行業は、以下のように海外の募集型企画旅行を除く全ての旅行業務が取り扱える登録区分です。

企画旅行 手配旅行

他社募集型企画旅行の代売

相談
業務

募集型 受注型
海外 国内 海外 国内 海外 国内 海外 国内
第2種旅行業

観光庁HP「(図1)旅行業等の登録区分」をもとに作成

それでは、第2種旅行業ができることを、もう少し詳しく見て行きましょう。

3-1.企画旅行

企画旅行とは、旅行業者が旅行計画を作成して、その旅行計画に必要な宿泊先や交通機関等(バス・列車・飛行機など)を旅行会社が契約しておいて、旅行者に提供するような旅行商品のことを言います(旅行業法2条第1項第1号)。

企画旅行のうち「募集型企画旅行」とは、あらかじめ旅行業者が旅行計画を作成して、旅行者を募集するタイプの企画旅行のことです。具体的には旅行代理店が扱うパッケージツアーなどが、これに当たります。

2種旅行業では、海外の募集型企画旅行は取り扱えませんが、国内旅行について地域の制限なく募集型企画旅行を取り扱うことができます。

もうひとつの企画旅行である「受注型企画旅行」は、旅行者からの依頼に応じて、旅行業者が旅行計画を作成するもので、修学旅行や社員旅行などの団体旅行が、これに当たります。

第2種旅行業でも、受注型企画旅行であれば海外・国内の両方を取り扱うことができます。

3-2.手配旅行

手配旅行とは、旅行者と運送・宿泊事業者との間で、旅行者に代理して運送・宿泊事業者と契約の締結・媒介・取次をしたり、運送・宿泊業者に代理して旅行者と契約の締結・媒介・取次をしたりする旅行業務を言います(旅行業法第2条第1項第3号・第4号)。

具体的には、旅行業者の店頭やWebサイトなどで、旅館やホテルなどの宿泊施設や飛行機・JRなどのチケットを手配するような場合があたります。

第2種旅行業は、海外・国内のいずれの手配旅行も取り扱うことができます。

3-3.他社募集型企画旅行の代売

旅行業者は、他の旅行業者が実施する募集型企画旅行について、代理して旅行者に販売することができます(旅行業法14条の2

第2種旅行業は、海外・国内のいずれも取り扱うことができます。

3-4.相談業務

相談業務とは、旅行に関する相談に応ずる行為を言い、旅行業者は、この相談業務を有料で行うことができます(旅行業法1条第1項第9号)。

第2種旅行業は、海外・国内のいずれの相談業務取り扱うことができます。

4.まとめ

第2種旅行業登録の業務範囲や登録要件、登録手続きについて解説しましたが、いかがだったでしょうか?

最初にご案内した通り、第2種旅行業は、海外の募集型企画旅行以外の全ての旅行業務を取り扱える業務範囲の広い登録区分であることから、基準資産額や営業保証金等の資産要件が、第1種旅行業の次に高額であるなど、要件のハードルが比較的高い登録区分と言えるでしょう。

「基準資産額が確保できない時の対処法」や「営業保証金と弁済業務保証金分担金のどちらを選べば良いか」などは、記事中でご案内した別記事でも取り上げていますので、是非これらの記事も参考にして頂いて、登録を実現してください。

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