北海道で旅行業を始めるために必要な手続きについて

この記事の監修
時村 公之

行政書士つなぐ法務事務所 代表(特定行政書士/国内旅行業務取扱管理者)

時村 公之

1973年1月生まれ/広島県出身
旅行業・旅館業に特化した、中国・四国地方随一の観光法務専門の行政書士。
株式会社や個人事業主はもちろんのこと、観光協会やツーリズム機構などの一般社団法人の旅行業登録も手掛ける。
支援先企業も中国・四国地方を中心に、北陸・東海・関西・九州方面と、幅広いエリアで旅行業登録に関する支援を行っている。

北海道で旅行業を始める場合、どうすればよいのでしょうか?旅行業登録の手続きは旅行業法令によって定められてはいますが、各自治体が独自の条例を定めている場合もあり、手続きの流れや期間などは、都道府県によって異なります。

そこで、旅行業登録を専門で取り扱う行政書士が、北海道で旅行業登録を行う場合の流れや注意点をご案内します。

北海道で旅行業登録を検討されている方は、是非参考にして下さい。

1.申請先や申請に必要な様式を確認

まずは、旅行業登録の申請先を確認しましょう。

登録区分 登録行政庁 窓口
第一種旅行業 観光庁長官 北海道運輸局 観光部 観光企画課
北海道札幌市中央区大通西10丁目 札幌第2合同庁舎
011-290-2700
第2種旅行業
第3種旅行業
地域限定旅行業
旅行業者代理業
旅行サービス手配業
北海道知事 北海道庁 経済部 観光局 観光振興課 観光企画
北海道札幌市中央区北3条六丁目 本庁9階
011-206-9596

第1種旅行業以外の旅行業登録は、各都道府県知事が登録行政庁となります。ですので「主たる営業所(本店)」の所在地が北海道になる場合、申請先は北海道知事になります(実際の提出先は、観光振興課 観光企画です)。

第1種旅行業登録を行う場合は、観光庁長官が登録行政庁となります。なお、申請先は観光庁長官ですが、窓口は北海道運輸局の観光企画課です。

第1種旅行業の登録については、別の記事で詳しくご案内していますので、こちらをご覧ください。

第1種旅行業に登録するための要件と手続きを解説。

2.旅行業協会への入会を検討

もし、旅行業協会への入会を希望するなら、旅行業登録の申請の前に入会手続きを進めておきましょう。なぜなら、旅行業協会の発行する入会承諾書が、旅行業登録申請書類の添付資料になっているからです(旅行業協会の弁済業務保証金制度を利用する場合のみ)。

営業保証金や弁済業務保証金分担金については、以下の記事に詳しく解説していますので、ご覧ください。

営業保証金を供託するってどうするの?制度の概要や必要な金額も詳しく解説

旅行業協会と弁済業務保証金分担金。営業保証金との違いも徹底解説!

旅行業協会には、日本旅行業協会(JATA)と全国旅行業協会(ANTA)の2つの協会があります。JATAであれば本部、ANTAであればANTA北海道支部である「一般社団法人北海道旅行業協会」が申込の窓口になります。

どちらの旅行業協会を選べば良いか迷うところですが、第1種旅行業登録以外の旅行業者については、年会費の安いANTAが選ばれることが多いようです。

ただし、ANTAは入会の受付を年に6回しかしないので、とにかく早く旅行業協会に入会して旅行業登録をしたいという方については、随時募集を受け付けているJATAも検討の余地はあるでしょう。

ANTAに入会する場合、窓口である北海道旅行業協会に入会の申込を行います。本会の承認審査が奇数月の中旬に行われることから、窓口への申込の締切日は偶数月(2・4・6・8・10・12月)の下旬であることが多いです。

ANTAへの入会を希望するのであれば、入会に必要な書類を取り寄せる際に、申込受付の締切日や入会承諾書が受け取れる時期なども確認しておきましょう。

また、ANTAへの入会には北海道支部会員2名の推薦が必要で、書類提出後には北海道旅行業協会での面談もあります。

北海道旅行業協会での入会審査が終わると、東京で本会審査が行われます。入会承諾書が受け取れるのは、本会審査後の数日~2週間が目安です。

ちなみに旅行業協会に入会すると、弁済業務保証金制度が利用できるのはもちろんのこと、各旅行業協会の主催する研修やセミナーにも参加できますし、万が一のトラブルなどにも相談に応じてもらえます。またANTAであれば「全旅クーポン」や「全旅保険」も利用できます。

その他、会員間の横のつながりができるなどメリットも多いので、特に未経験で旅行業界に入られる方には、旅行業協会への入会をお勧めします。

【連絡先】
一般社団法人日本旅行業協会(総務・広報部  入会担当):TEL 03-3592-1271
一般社団法人北海道旅行業協会:TEL 011-241-4089

3.旅行業の登録申請に必要な書類を準備する

旅行業の登録申請に必要な書類は以下の通りとなります。

名称 書類の入手先 備考

登録申請書 北海道HPから様式DL
※【様式】登録申請書、【様式】登録簿様式(1)
※必要に応じて、【様式】登録簿様式(2)も使用
役員の欠格事項に該当しない旨の宣誓書 北海道HPから様式DL
※【様式】欠格事項に該当しない旨の宣誓書
法人の場合は、監査役を含む全役員分、個人の場合は事業者(申請者)本人。
※それぞれ自署したもの
旅行業務に係る事業の計画書 北海道HPから様式DL
※【様式】事業計画
航空券発券契約がある場合、海外手配業者の契約がある場合、他社主催代売の契約がある場合は、その契約書の写しを添付。
旅行業務に係る組織の概要 北海道HPから様式DL
※【様式】組織の概要
旅行業務取扱管理者がどの部署(営業所)に在籍しているのかが分かるように記載
旅行業協会の発行する入会確認書または入会承諾書 入会した旅行業協会にて発行 協会に入会する場合のみ
旅行業務取扱管理者選任一覧表 北海道HPから様式DL
※【様式】旅行業務取扱選任一覧表
旅行業務取扱管理者の合格証または認定証の写し 選任した管理者全員の合格証又は認定証の写し。なお、名字が違う場合は、名字の変更が確認できる書類(戸籍抄本等)を添付。
旅行業務取扱管理者の履歴書
市販の履歴書で可
旅行業務取扱管理者の欠格事由に該当しない旨の宣誓書 北海道HPから様式DL
※【様式】欠格事項に該当しない旨の宣誓書
氏名は自署
管理者が役員の場合は省略可
旅行業務取扱管理者定期研修の修了証の写しまたは誓約書 誓約書の様式は北海道HPから様式DL
※旅行業務取扱管理者定期研修受講に係る誓約書
誓約書は、修了証の写しが提出できない場合に提出。
事故処理体制の説明書 北海道HPから様式DL
※【様式】事故処理体制の説明書
標準旅行業約款【表紙】 北海道HPから様式DL
※標準旅行業約款【表紙】
標準旅行業約款 観光庁HPから様式DL
※標準旅行業約款(令和2年3月2日改正)
(サイト下部「旅行業法及び省令等」内)
独自に定める場合は、その旅行業約款および認可申請書
営業保証金供託書または弁済業務保証金分担金納付書の写し 登録通知書受領後14日以内に提出。

定款または寄付行為 紛失した場合は、公証役場で交付請求 目的欄に「旅行業」又は「旅行業法に基づく旅行業」の記載があること
登記事項証明書(履歴事項全部証明書) 法務局にて発行 協同組合等は総会・理事会議事録
直近の事業年度における貸借対照表・損益計算書 法人税の確定申告書、株主資本等変動計算書、勘定科目内訳明細書
開業から最初の決算を迎えていない法人については、開業貸借対照表とそれに計上したものの証明書(預金残高証明書・固定資産税評価証明・鑑定評価書等)

住民票
財産に関する調書 北海道HPから様式DL
※【様式】財産に関する調書
申請直前に作成したもの
添付書類として「預金残高証明書」
なお、土地・建物を所有する場合、「固定資産評価証明書」または「不動産鑑定評価書」のいずれかを添付

中には、書き方のわからない書類や、様式等もなく自分で作成しなければならない書類もありますので、担当課の方によく相談しながら進めていくと良いでしょう。

登録に必要な様式は、一般社団法人北海道旅行業協会(TEL:011-241-4089)から入手できます。また、県や観光庁のHPからもダウンロードできます。

4.旅行業登録申請書を提出

旅行業登録申請書と添付書類が全て整ったら、いよいよ申請書を北海道に提出します。

北海道では、申請書の提出は持参のみとなっています。持参する場合は、予め担当者への事前連絡が必要です。なお、申請者本人以外の方が代理で持参することも認められています。

担当課で書類を確認してもらい、内容に不備等がなければ登録手数料:20,600円を北海道収入証紙にて納付します。収入証紙は北海道庁本庁1階の北洋銀行、または本庁地下1階のセイコーマートで購入できます。収入証紙を購入して、登録申請書に貼り付ければ提出は完了です。

なお、収入証紙の貼り付けの際に割印が必要となりますので、代表者印を忘れずに持参しましょう。

北海道における旅行業登録の標準処理期間は40日ですが、早ければ1週間~10日程度で審査が完了することもあるようです。

5.登録通知書の受領から営業開始まで

旅行業登録が完了すると、登録通知書が発行されます。

登録通知書を受け取ったら、「営業保証金の供託」または「弁済業務保証金分担金の納付」を行い、「供託書の写し」または「納付書の写し」を北海道に提出します。

届出書は、登録通知書を受領した日より14日以内に提出しなければいけませんので注意してください。

以上で旅行業の登録手続きは完了です。

登録が完了したら、営業開始に必要なものを準備していきます。

まず事務所内に「登録票」や「取扱料金表」を事務所内の見えやすい場所に掲示し、「旅行業約款」を備えおきます。

次に、選任した旅行業務取扱管理者に「旅行業務取扱管理者証」を、営業所外で旅行業務を取り扱う者に「外務員証」を発行し、それぞれに携帯させます。

これらの準備が整ったら、いよいよ営業開始です。

営業開始に必要なものについては、こちらの記事で詳しくご案内していますので、併せてご覧ください。

旅行業の営業開始までに準備が必要な事項を解説

6.専門家に依頼するメリット

最後に少しだけ、これらの手続きを旅行業登録を扱う行政書士に依頼するメリットと費用についてご案内します。

ここまで解説を読み進めて頂いた方の中には、

「これだけの書類を全部ひとりで作れるかな」
「旅行業協会の入会を考えると、スケジュールの組み立てが難しいぞ」
「他にもやることがあって、旅行業の開始予定日まで登録できるか不安だな」

といった感想を持たれた方もいらっしゃると思います。

他にも、「登録申請までに揃えておかないといけないものって何だろう」とか「旅行業協会や担当課とうまく交渉できるかな」といった疑問や不安があるのではないでしょうか。

実際に我々のような行政書士に依頼をされる方は、こういった悩みを持たれた方が多いです。

旅行業登録手続きを行政書士に依頼すると、煩雑な書類作成はもちろんのこと、旅行業登録に必要な要件の確認や調整、旅行業協会の入会を含めたスケジューリングなどを一手に引き受けてもらえます。

また、旅行業登録以外にも、約款や登録票等の準備など、色々と相談にものってもらえますので、短期間で安心してスムーズに旅行業を始められるというのが、最大のメリットと言えますね。

一方で、時間に余裕があってひとつひとつ調べながらコツコツと手続きを進めていける方ですと、これらの手続を行政書士に依頼するメリットをあまり感じられないかもしれません。

ちなみに、旅行業登録と旅行業協会の入会手続きを行政書士に依頼した場合の費用は、第2種・第3種・地域限定旅行業であれば20~30万円くらい、第1種旅行業だと25~35万円くらいが基本的なプライスラインではないかと思います。

とはいえ、ご相談者様の状況に応じて金額は大きく変わってきますので、まずは旅行業登録を扱う行政書士事務所に連絡してみるよといでしょう。

7.まとめ

北海道の旅行業登録について解説してみましたが、いかがだったでしょうか?

ここではふれていませんが、旅行業登録には登録要件というものがありますので、登録を検討されている方は、登録要件もしっかりと確認しておきましょう。以下の記事で登録要件について詳しくご案内していますので、是非確認してみてください。

旅行業登録をするためには何がいる?旅行業の登録要件をわかりやすく解説しました。

さて、ご案内の通り、旅行業登録は申請すればすぐに登録が完了するわけではなく、申請から登録までに1~3ヶ月程度かかります。

特にANTAの入会を検討する場合は、日程等を含めて早めに準備をしておかないと、「営業開始予定日に旅行業登録が間に合わない!」なんてことになってしまいます。時間に余裕をもって手続きを進めていきましょう。

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